空気は伝染する。ため息に悩んだ話

毎日、ため息をつく人がいます。

たまになら、誰にでもあることだと思います。

疲れた時。
ほっとした時。
気持ちを切り替えたい時。

ため息そのものは、決して悪いものではありません。

「ため息」は、
ストレスや緊張で乱れた呼吸をリセットし、
自律神経を整えようとする、
身体の無意識の反応とも言われています。

つまり、心や身体が、
「少し休ませてほしい」
とサインを出している場合もあるのです。

お風呂に入って浴槽につかった時、
思わず「はぁ……」とため息が出ることがあります。

あれは、
身体がゆるみ、
ストレス発散やリラックスにつながる反応とも言われています。

つまり、ため息自体は、
必ずしも悪いものではありません。

でも、毎日のように、
朝から何度もため息をつく人が近くにいると、
聞いている側も、だんだんしんどくなってくることがあります。

本人に悪気はないのかもしれません。

何か悩みがあるのかもしれません。
疲れているのかもしれません。
心の中で、何かを抱えているのかもしれません。

それでも、ため息が続くと、
その場の空気が重くなることがあります。

聞いているこちらまで、
気持ちが沈んでしまうことがあります。

本人も苦しいのは分かる。
でも、毎日続くと、こちらまで疲れてしまう。

「こんなふうに感じる自分が冷たいのかな」

そう思ったこともありました。

問題は「慢性化」と「空気の伝染」

たまに出るため息なら、
誰にでもあることだと思います。

でも、毎日のように続くと、
周囲への影響も大きくなってきます。

人は、思っている以上に、
空気や感情の影響を受けます。

職場でも、
一人の空気感によって、
全体の雰囲気が変わってしまうことがあります。

昔、
「腐ったみかんは、まわりのみかんも腐らせる」
という表現を聞いたことがあります。

少し強い言い方なので、
人に対して安易に使うべきではないと思います。

ただ、一人の重い空気や不満が、
まわりへ広がっていくことがある。

その意味では、
ため息もまた、
空気を変えてしまう力があるのかもしれません。

「悪貨は良貨を駆逐する」
という言葉もありますが、
悪い空気や不満の方が、
広がりやすいことは確かにあるように感じます。

明るく頑張ろうとしている人がいても、
重い空気が続くと、
そちらへ引っ張られてしまうことがあります。

本人も、かなり苦しいのかもしれない

ただ、
ため息をついている本人も、
かなり苦しい状態なのだと思います。

しかも、多くの場合、
本人は無自覚です。

自分が周囲へどんな空気を出しているのか、
気づいていない場合もあります。

ちょうど、
いじめている側が、
自分ではそれほど深刻に考えていないことがあるように、
本人は悪気なくやっている場合もあります。

でも、まわりは確実に影響を受けています。

ため息が増える背景には、

  • 睡眠不足
  • 疲労の蓄積
  • 人間関係のストレス
  • 将来への不安
  • 仕事への不満
  • 思い通りにいかない苦しさ

など、
いろいろなものが重なっているのだと思います。

こうした状態は、
心が疲れているサイン
として表れている場合もあります。

また、人によっては、

「自分の思うようにまわりが動いてくれない」
「なんで自分ばかり」

そんな不満や、
気持ちの偏りが積み重なっている場合もあるのかもしれません。

もちろん、
それだけが原因とは限りません。

ただ、長年いろいろな職場を見てきて、
そんなふうに感じる場面もありました。

貧乏ゆすりは我慢できても、ため息は難しい

似たようなクセとして、
貧乏ゆすりがあります。

もちろん、
あれも気になる人は気になります。

でも最近では、
足を動かすことで血流が良くなり、
健康面では悪いことばかりではない、
とも言われています。

少なくとも、
人に直接ネガティブな空気を広げる感じは、
そこまで強くありません。

だから、
まだ見て見ぬふりもしやすい。

でも、ため息は違います。

音としてだけではなく、
空気感として伝わってくる。

そこが難しいところなのだと思います。

「ため息1回100円制度」を作ったこともあった

以前、
職場の空気を少しでも変えられないかと思い、
「ため息1回100円」
みたいな制度を作ったことがあります。

ただ罰みたいになるのも嫌だったので、
思わず笑ってしまうような、
ちょっと楽しめる貯金箱まで用意しました。

お金を入れる時に、
少しでも空気が和らげばと思ったからです。

実際、
多少笑いが起きることもありました。

でも、
それで根本的に解決したかというと、
正直、よく分かりません。

ため息は、
単なるクセや音の問題ではなく、
その人の疲れやストレス、
生きづらさがにじみ出ている場合もあるからです。

だから、
「やめればいい」
だけでは、
なかなか解決しないのだと思います。

本人も苦しい。
周囲も疲れていく。

その両方があるから、
難しいのだと思います。

本人ができること

では、ため息が多い本人は、
どうしたらいいのでしょうか。

まず大切なのは、
「自分はかなり疲れているのかもしれない」
と気づくことだと思います。

ため息は、
無意識に出ていることが多いものです。

だから、
本人には悪気がありません。

でも、
悪気がないからといって、
周囲に影響がないわけではありません。

もし、自分でもため息が増えていると感じるなら、
少し休んだ方がいいサインなのかもしれません。

そんな時は、
ため息の代わりに、
少しだけ言葉にしてみる。

「今日はちょっと疲れてるな」
「最近ちょっと余裕ないな」
「少し休憩しよう」

そう言葉にするだけで、
周囲の受け止め方は変わることがあります。

心が疲れている時は、
無理に元気になろうとするより、
毎日がしんどいと感じる自分に気づくこと
の方が大切な場合もあります。

また、
深呼吸を意識したり、
ゆっくり最後まで息を吐き切ることも、
気持ちを落ち着かせる助けになります。

睡眠を見直す。
一人の時間を作る。
ストレスを書き出してみる。

そんな小さなことでも、
少しずつ変わることがあります。

周囲はどう接したらいいのか

では、
近くにため息が多い人がいる場合、
周囲はどうしたらいいのでしょうか。

これが、なかなか難しいところです。

「またため息?」
「ため息ばかりつかないで」
「こっちまで暗くなる」

そう言いたくなることもあります。

でも、真正面から注意すると、
相手は責められたように感じてしまうかもしれません。

その結果、
関係が悪くなったり、
余計に空気が重くなったりすることもあります。

だから、
最初は注意ではなく、
状態確認の方がいいのかもしれません。

「疲れてる?」
「大丈夫?」
「少し休んだ方がいいんじゃない?」

そんなふうに、
ため息そのものを責めるのではなく、
相手の状態を気にかける形です。

もちろん、
それで必ず解決するわけではありません。

長年のクセになっている場合もあります。

本人が自覚していない場合もあります。

こちらが気を遣って声をかけても、
あまり変わらないこともあります。

だからこそ、
結局は、
本人が少しずつ気づいていくしかない部分もあるのだと思います。

巻き込まれすぎないことも大切

ため息が多い人の近くにいると、
やさしい人ほど、
相手の気持ちを背負ってしまいます。

「何とかしてあげなきゃ」
「自分が気にしすぎなのかな」
「こんなふうに感じる自分が冷たいのかな」

そう思ってしまうこともあります。

でも、
相手の疲れを、
こちらが全部背負う必要はありません。

相手には相手の事情があります。

そして、
自分には自分の心があります。

近くにいる人の空気に引っ張られすぎると、
今度は自分が疲れてしまいます。

だから、
必要な時は、
少し距離を取ってもいいのだと思います。

人との距離感に悩む時は、
人間関係の疲れ
として、一度整理してみることも大切です。

  • 少し席を外す
  • 別の作業に集中する
  • 深く受け止めすぎない
  • 自分の気分転換を入れる
  • 相手の問題と自分の問題を分けて考える

これは、
冷たいことではありません。

自分の心を守るために必要なことです。

結局、今も答えは出ていない

正直に言えば、
この問題について、
今も完全な答えは出ていません。

どの職場にも、
だいたい一人は、
ため息が多い人がいた気がします。

そして、
毎回、
どう接したらいいのか悩みました。

本人も苦しい。
でも、周囲もしんどい。

その両方があるから、
簡単には割り切れません。

だから、
この記事も、
誰かを責めたいわけではありません。

ただ、
空気や感情は、
思っている以上に周囲へ伝わる。

そのことは、
お互い少し気づいた方がいいのかもしれない。

そんなふうに思っています。

ため息を責めるのではなく、
心の疲れに気づくきっかけにする。

そんなふうに考えることができたら、
少しだけ、
人との距離感も楽になるのかもしれません。