70歳まで働けと言われても、正直しんどいと感じる人へ
「これからは、70歳まで働く時代です」
そんな言葉を聞く機会が増えました。
健康で、仕事にもやりがいがあり、自分の意思で働き続けたい人にとっては、悪い話ではないのかもしれません。
けれど、今でも精一杯働いている人にとっては、
「この先、まだ10年も20年も働かなければならないのか」
と思うだけで、気持ちが重くなることもあるでしょう。
体力に自信がない。
今の仕事を続けられるとは思えない。
仕事以外の人生も楽しみたい。
本音を言えば、できるだけ早く仕事を減らしたい。
そう感じることは、決して怠けているからではありません。
仕事だけを中心にした生活のまま、人生を終わらせたくない。
そう思うのは、とても自然なことではないでしょうか。
「働ける」と「働かなければならない」は違う
70歳になっても元気で、働きたいと思える仕事がある。
そのような人が働き続けられる社会は、よいことだと思います。
年齢だけを理由に仕事を辞める必要はありませんし、働くことが生きがいや人とのつながりになる人もいます。
ただし、
「70歳まで働けること」と、「70歳まで働かなければ生活できないこと」は、まったく違います。
自分の意思で働くのか。
生活のために、やめたくてもやめられないのか。
同じ「働く」という言葉でも、その意味は大きく異なります。
働きたい人が働けることは、選択肢が増えるということです。
一方で、誰もが当然のように70歳まで働かなければならない社会になれば、それは選択肢が増えたとは言えません。
働くことを選べるのではなく、働かざるを得ないからです。
人によって、70歳まで働く負担は違う
「元気なら、70歳くらいまで働けるでしょう」
そう簡単に言われることもあります。
けれど、人によって置かれている状況は違います。
- 健康状態
- 体力
- 仕事の内容
- 通勤時間
- 家族の介護
- 住宅費や生活費
- 貯蓄や年金額
- 一人暮らしか、家族と暮らしているか
デスクワークを中心にしてきた人と、長年、体を使う仕事を続けてきた人では、同じ年齢でも負担は違います。
健康な人と、病気や痛みを抱えている人を同じ基準で考えることもできません。
家族から支えを受けられる人もいれば、一人で生活を支えなければならない人もいます。
だから、
「70歳まで働くのが普通」
「みんな働いているのだから、自分も頑張るべき」
と、一つの基準に合わせる必要はありません。
周囲と同じように働けないからといって、自分を責めることもないのです。
体力だけでなく、気持ちが疲れていることもある
70歳まで働くのがしんどいと感じる理由は、体力だけではありません。
長い間、仕事を中心に生活してきた人ほど、
「もう少し自分のために時間を使いたい」
と思うことがあります。
若い頃は、生活のため、家族のため、将来のために働いてきた。
休日も疲れを取るだけで終わり、やりたいことは後回しにしてきた。
それでも、
「定年したらゆっくりしよう」
「時間ができたら旅行へ行こう」
と考えながら働いてきた人もいるでしょう。
ところが、60歳を前にしても、
「次は65歳まで」
「その先は70歳まで」
と言われれば、
「自分の時間は、いつになったら持てるのだろう」
と感じるのも無理はありません。
働くことそのものが嫌なのではなく、
仕事だけの人生になってしまうことが、しんどいのです。
仕事を減らせば、すぐに人生を楽しめるわけでもない
それなら、仕事を減らして自由な時間を増やせばよい。
そう思うかもしれません。
しかし、現実はそれほど単純ではありません。
自由な時間が増えても、その時間を使うためのお金がなければ、できることは限られます。
旅行へ行くにも、趣味を始めるにも、外食やドライブを楽しむにも、ある程度のお金が必要です。
仕事の日数を減らしても、毎月の生活費が不足するのであれば、安心して休みを楽しむことはできません。
「せっかく休みが増えたのに、お金を使えない」
という状況になれば、家でテレビや動画を見ながら一日が終わる日も増えるかもしれません。
もちろん、何もせずに体を休める日があってもよいと思います。
静養や充電も必要です。
ただ、自由な時間を増やすだけで、自然に充実した生活になるわけではありません。
時間と一緒に、その時間をどう使うのか、何に使えるお金があるのかも考える必要があります。
関連:60歳を過ぎても働く時代に考えたいこと|60代は働き方を見直す時期
理想はあっても、都合のよい仕事は少ない
私自身、仕事だけを中心にした生活ではなく、仕事以外の時間も持てる働き方が理想です。
例えば、週4日働き、週3日休む。
それくらいであれば、収入を得ながら、仕事以外のことにも時間を使いやすくなります。
ただし、働く日数を減らしても、生活に必要な収入は確保しなければなりません。
仮に、当面は手取りで月20万円ほど必要だとします。
週4日の勤務でその金額を得ようとすれば、時給や日給はそれなりに高くなければなりません。
時給3,000円、日給2万円ほどの仕事があれば理想に近づきますが、現実には、そのように都合のよい仕事は多くありません。
社会は、それほど甘くないということです。
だから、多くの人は、
- 働く日数
- 働く時間
- 必要な収入
- 仕事の負担
- 自由な時間
の間で、折り合いをつけることになります。
完全に理想どおりの働き方が見つからなくても、
今より少し勤務日数を減らす。
体への負担が少ない仕事へ移る。
収入は少し下がっても、自由な時間を増やす。
そのように、自分が納得できる形へ少しずつ近づけていくことはできます。
関連:50代・60代の働き方に迷ったとき|仕事を続ける・辞める・小さく働く考え方
仕事をしなくても、何もしない人生にしたいわけではない
生活費を気にせずに暮らせるだけのお金があれば、働きたくない。
そう思う人は、意外に多いのではないでしょうか。
私自身も、十分なお金があれば、生活費を得るためだけの仕事は減らしたいと思います。
ただ、だからといって、毎日何もせずに過ごしたいわけではありません。
仕事という形ではなくても、
- 地域の活動
- ボランティア
- 誰かの手助け
- 人と関わる場
- 自分の経験を生かせる活動
など、何らかの形で社会とのつながりは持っていたいと思います。
人は、収入を得るためだけに動いているわけではありません。
- 誰かに必要とされること
- 人と話すこと
- 自分の役割を持つこと
それが、生活の張り合いになることもあります。
ただし、地域活動や福祉を、いつまでも無償の善意だけに頼ることには限界もあるでしょう。
参加する人の高齢化や減少が進めば、これまでのような仕組みを維持できなくなる可能性もあります。
だから今後は、仕事、地域活動、ボランティアをはっきり分けるのではなく、無理なく続けられる新しい関わり方も必要になるのかもしれません。
一つのことを長く続けられなくてもいい
退職後の生活について考えるとき、
「一生続けられる趣味を見つけましょう」
と言われることがあります。
けれど、誰もが一つのことに長く夢中になれるわけではありません。
興味を持って始めても、途中で飽きることもあります。
思っていたほど自分に合わず、別のことをやりたくなることもあるでしょう。
それでもよいのだと思います。
一つの趣味を何十年も続けなければ、充実した人生にならないわけではありません。
興味が変われば、別のことを始めればよい。
少し休んで、またやりたくなったら戻ればよい。
大切なのは、
仕事以外にも、「何かやってみたい」と思える気持ちを持ち続けること
ではないでしょうか。
お金は、安いか高いかだけで決めるものではない
仕事を減らした後の生活では、お金の使い方も大切になります。
ただ安いものを選べばよいわけでも、高いものを買えば満足できるわけでもありません。
私自身は、ブランド名や高級であることだけを理由に物を選ぶタイプではありません。
その物をどれくらい使うのか。
価格に見合う品質があるのか。
ほかに優先して買いたいものはないか。
長く使えるのか。
そうしたことを考えながら、自分にとって一番よいと思えるものを選びます。
これは、物だけでなく、時間の使い方にも同じことが言えるように思います。
自分にとって価値があると思えば、お金を使う。
それほど必要でなければ、使わない。
人と比べるのではなく、
自分は何にお金と時間を使いたいのか
を考えることが、これからの生活ではますます大切になります。
無理を続けて健康を失えば、元も子もない
70歳まで働くことを考えるとき、何より大切なのは健康です。
生活費のために無理を続け、体を壊してしまえば、その後の生活にも大きな影響が残ります。
若い頃は、多少疲れていても無理ができたかもしれません。
しかし、年齢を重ねれば、回復に時間がかかるようになります。
以前と同じ仕事でも、体への負担を大きく感じることもあります。
健康を失えば、仕事を続けられなくなるだけではありません。
旅行や趣味、地域活動など、仕事以外に楽しみたかったこともできなくなるかもしれません。
将来のために働いているのに、その働き方によって将来を楽しめなくなってしまっては、本末転倒です。
だから、
- 今の仕事をこのまま続けられるか
- 体への負担を減らせないか
- 働く時間や日数を見直せないか
- 休む時間を確保できているか
を、早めに考えておく必要があります。
70歳まで無理して働く状況を減らすために
すぐに仕事を辞めることが難しくても、今からできることはあります。
- 毎月の生活費を確認する
- 老後に必要な収入を考える
- 固定費や支出を見直す
- 今より負担の少ない仕事を探す
- 資格や経験を生かせる働き方を考える
- 小さな収入源を複数持てないか考える
- 仕事以外の楽しみや人とのつながりを作る
すべてを一度に変える必要はありません。
ただ、
「そのときになったら考える」
と先延ばしにするほど、選べる働き方は少なくなっていきます。
体力があるうちに準備を始める。
少しずつ生活費を把握する。
興味のある仕事や活動を試してみる。
その積み重ねが、
「70歳まで今の仕事を続けるしかない」
という状況を変えるきっかけになるかもしれません。
関連:何歳まで働けばいいのか分からない人へ(準備中)
仕事を減らしたいのではなく、仕事だけの人生にしたくない
70歳まで働くこと自体が、悪いわけではありません。
仕事が好きで、自分の意思で続けたいのであれば、それも一つの生き方です。
一方で、生活のために無理を続け、仕事以外のことを何もできないまま年齢を重ねることに不安を感じる人もいます。
私が大切だと思うのは、
何歳まで働くかだけではなく、どのように働き、残りの時間をどう生きるかを考えることです。
仕事を続けながら、好きなことにも時間を使う。
仕事の形を変えながら、社会とのつながりを持つ。
収入を得る仕事から離れた後も、地域や誰かのために動く。
働くことの形は、年齢とともに変わってもよいのだと思います。
仕事を減らしたいのではありません。
仕事だけの人生にはしたくないのです。
70歳まで働く時代だからこそ、その本音を無視せず、自分に合った働き方と生き方を考えてみてはいかがでしょうか。
