老後のために、いつまで我慢すればいいのか|「ここまで貯めたら十分」を決めて、今の暮らしも楽しむ

旅行は、老後の楽しみに取っておこう。
欲しい物も、今は我慢しておこう。
仕事も、もう少し続けておこう。

そうやって「老後のため」と我慢を続けてきたのに、
いつになったら、この我慢は終わるのだろう
と感じている人は少なくないのではないでしょうか。

老後のための我慢が、終わらない

老後のために、我慢しているものは人によって違います。

  • 旅行や趣味など、楽しみに使うお金
  • 体を休めるための休みや、自分の時間
  • 本当は減らしたい仕事

こうしたものを後回しにして、少しずつお金を貯めてきた人もいるでしょう。

ところが、ある程度貯まっても、気持ちは楽になりません。
「もう少し働いておこう」
「もう少し貯めておこう」
そう思って、また同じ我慢を続けてしまいます。

もちろん、老後に備えること自体は、間違いではありません。
年金だけでは足りない暮らしもありますし、病気や家の修理など、急にお金が必要になることもあります。
備えがあるからこそ、安心して暮らせる面もあります。

苦しいのは、備えることではありません。
我慢がいつまでも終わらないことです。

我慢が終わらないのは、「ここまで」の線引きがないから

なぜ、貯めても我慢が終わらないのでしょうか。
それは、「いくら貯めたら終わりにするか」という目標の金額、つまり「ここまで」の線引きがないからです。

目標の金額がなければ、いくら貯めても、ゴールが見えません。
100万円貯まれば200万円、200万円貯まれば300万円。
どこまで行っても「まだ足りないかもしれない」という気持ちが残ります。

多くの人は、
「この貯金で足りるだろうか」
と考えます。

でも、その前に決めておくべきことがあります。
それは、「自分は、いくらあれば足りるのか」ということです。

「足りるかどうか」は、比べる金額が決まっていなければ答えが出ません。
答えが出ないから、不安が消えず、我慢も終わらないのです。

我慢を終わらせるには、まず終わりの線引きが必要です。
「ここまで貯まったら、その先は我慢しなくていい」
という線を、自分で引くことです。


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「ここまで」は、自分の老後の暮らしから決める

では、その線はどうやって決めればいいのでしょうか。

老後のお金の話になると、「平均ではいくら必要」といった金額を目にすることがあります。

でも、その金額だけを自分の目標にする必要はありません。
持ち家か賃貸か、一人暮らしか夫婦か、旅行を楽しみたいか家で過ごしたいか。
暮らし方が違えば、必要なお金も違うからです。

だから、考える順番はこうです。
どんな老後を送りたいのか。そのために、毎月いくらかかるのか。
そこから、年金では足りない分を計算します。

そのうえで、次の二つを考えます。

  • 年金で足りない分を、何年分持っておけば納得できるか
  • 病気や介護、家の修理など、急な出費のための予備をいくら持つか

一つ目を考えるときは、働いて足りない分を埋められる年数には限りがある、ということも頭に入れておきたいところです。

60代のうちは働いて補えても、年齢が上がるほど、働いて稼ぐことは難しくなります。
働けなくなったあとの年数を、貯めたお金で支えることになります。

たとえば、こんなふうに考えます。
(数字は考え方を示すためのものです。実際の金額は人によって違います)

  • 年金で、毎月4万円足りない
  • 1年では、4万円×12か月で48万円
  • 働けなくなったあと、20年分を持っておけば納得できるなら、約960万円
  • 急な出費の予備として、300万円を別に持っておく
  • 合わせて、約1,260万円が「ここまで」

何年分にするか、予備をいくらにするかに、決まった正解はありません。
同じ金額を持っていても、安心できる人もいれば、まだ足りないと感じる人もいます。

そして、どれだけ貯めても、「絶対に安心な額」はありません。
何歳まで生きるのか、いつ病気になるのかは、誰にも分からないからです。
「絶対に安心できるまで」を目指すと、我慢はいつまでも終わりません。

だから決めるのは、「ここまでなら納得できる額」です。
自分の暮らしから考えて、自分で決めた金額だからこそ、終わりの線として使えるのです。


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「ここまで」が見えたら、我慢を少しずつ終わらせる

「ここまで」の金額が決まったら、今の貯金や、これから貯まる見込みと比べてみます。

すでに届いている人、または今のペースで届く見込みがある人は、
その先のお金や時間は、今の暮らしのために使っていいのです。

「ここまで」を超えて貯め続けても、その分は、自分で決めた老後のためのお金には入らないからです。

今の暮らしを楽しむ方法は、お金を使うことだけではありません。

  • 行きたかった旅行や、続けたかった趣味にお金を使う
  • 仕事を少し減らして、体を休める時間や自分の時間を増やす

仕事を減らせば、収入は減ります。

でも、「ここまで」に届いていて、もうその分を貯める必要がないのなら、減った収入の代わりに、時間と体力が戻ってきます。
これも、今の暮らしを楽しむ一つの方法です。

ここで、もう一つ考えておきたいことがあります。

同じお金でも、体力のある時期に使うのと、ずっと後に使うのとでは、できることが違うということです。

遠くへの旅行や、山歩き、長い時間をかける趣味。
こうしたことは、体が元気なうちでないと楽しみにくくなります。
年齢を重ねると、出かけること自体が疲れるものになり、近場や日帰りが中心になっていくこともあります。

「いつか」と取っておいたお金が、その「いつか」に使えないこともあるのです。

一方で、まだ「ここまで」に届いていない人もいるでしょう。

その場合は、我慢を続けることになります。
ただし、そのときも我慢を続ける期間と金額を決めておくことが大切です。

たとえば、
「あと5年、毎月3万円ずつ貯める」
と決めれば、5年後には我慢が終わることが分かります。

同じ我慢でも、終わりが見えている我慢は、終わりの見えない我慢よりずっと続けやすくなります。


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今と老後に、自分で配分を決める

ここまで考えると、大切なのは、使いすぎも、我慢しすぎも、どちらも答えにしないことだと分かります。

今を楽しむために使いすぎれば、老後に困るかもしれません。
老後のために我慢しすぎれば、元気な今の時間を逃してしまうかもしれません。
どちらか一方だけを選ぶのではなく、今と老後にどう分けるかを考えることです。

分けるのは、お金だけではありません。

仕事をどこまで続けるか、時間を何に使うかも、今の暮らしと老後のどちらに使うかを決めることです。
その分け方を、世間の基準ではなく、自分で決める。
それが、我慢しすぎも使いすぎもしない方法です。

そして、一度決めた「ここまで」や分け方は、ずっと同じでなくてかまいません。

  • 親の介護が始まり、必要なお金が増える
  • 体調をくずして、思っていたより早く働けなくなる
  • 暮らし方が変わり、毎月かかるお金が減る

暮らしや体の状態が変われば、「ここまで」も、今と老後への分け方も、見直していいのです。

老後のために、いつまで我慢すればいいのか。
それは、自分の老後の暮らしから「ここまでなら納得できる額」を決め、そこに届くまでです。

届いたら、その先のお金や仕事、時間を、今の暮らしと老後にどれだけ分けるかは、あなた自身が決めていいのだと思います。