収入が減るのが怖くて仕事を辞められない|「辞める・続ける」の前にお金から考える
朝、仕事に向かう足が重い。
このまま続けていいのだろうか、と思う日が増えてきた。
それでも、
「辞めたら、収入はどうなるんだろう」
そう考えたとたん、その先へ進めなくなる。
そんな経験はないでしょうか。
仕事を変えたい気持ちがあるのに、お金のことを思うと動けない。
これは、決して弱いからでも、決断力がないからでもありません。
生活を守ろうとする、ごく自然な気持ちだと思います。
辞めたい気持ちはある。でも収入がなくなるのは怖い
仕事への不満や負担を抱えながら、それでも働き続けている人は、たくさんいます。
辞めることを考え始めると、頭の中にこんな声が浮かんでこないでしょうか。
- 「この年齢で、次の仕事は見つかるのだろうか」
- 「今の給料を手放したら、もう同じ額には戻れないかもしれない」
- 「家族に、お金の心配をかけるわけにはいかない」
- 「貯金が減っていくのを、毎月見ていられるだろうか」
そして結局、
「やっぱり、今は無理だ」
と、気持ちにふたをしてしまう。
特に人生後半になると、その怖さは若い頃より大きくなります。
次の仕事で、今と同じ収入を得られるとは限らないからです。
「辞めたい」という気持ち。
「生活を守りたい」という気持ち。
この二つは、ぶつかり合っているように見えます。
でも、どちらも、うそのない現実的な気持ちです。
だから、勢いだけで辞めることも、怖いからという理由だけで我慢し続けることも、最初から答えにしないでほしいのです。
本当に怖いのは「収入が減ること」なのか
「収入が減るのが怖い」
ひと言でいえば、そうかもしれません。
でも、その中身をよく見てみると、人によって怖さの正体はかなり違います。
あなたが本当に怖いのは、次のうちのどれでしょうか。
- 毎月の生活費が足りなくなること
- 貯蓄が減っていくこと
- 老後のためのお金を、予定より早く使ってしまうこと
- 二度と今と同じ収入を得られないこと
- この先、何が起こるか分からないこと
こうして分けてみると、
「何となく、お金が不安」
という気持ちの中身が、少しずつ見えてきます。
そして、不安の中身が違えば、やるべきことも変わってきます。
毎月の生活費が心配な人が、老後のお金の計算ばかりしていても、気持ちは落ち着きません。
反対に、先の見えなさが怖い人が、毎月の家計だけを見直しても、不安は残ったままかもしれません。
ただ、多くの怖さには、共通するところがあります。
「実際にいくら足りなくなるのか」が分かっていないから、怖さが大きくなっているのです。
見えないものは、実際より大きく感じるものです。
だから必要なのは、数字で確認してみることなのだと思います。
関連:老後のお金と暮らしの不安|50代・60代から考える現実的な備え
今の収入を100%維持しなければならないのか
収入が減るのが怖いとき、多くの人は「今の給料」を基準にして考えてしまいます。
だから、今より少しでも減れば、損をしたように感じます。
でも、今の給料は、これまでの立場や働き方にもとづいて決まってきたものです。
これから先の暮らしに、その金額がまるごと必要とは限りません。
暮らしにかかるお金から、年金や、貯蓄から取り崩せるお金など、仕事以外でまかなえるお金を差し引く。
残った分が、仕事をして働いて、まかなう必要があるお金です。
それが今の給料より少なければ、収入が減っても暮らしは成り立つかもしれません。
それに、働き方を変えて収入が減る代わりに、取り戻せるものもあります。
勤務時間が短くなれば、体を休める時間や、家族と過ごす時間ができます。
責任が軽くなれば、家に帰ってまで仕事のことを考えずにすみます。
反対に、住宅ローンが残っている、子どもの学費がまだかかる、親の介護にお金が必要になっている。
そんなふうに、収入が減ると暮らしが大きく苦しくなる時期であれば、今は辞める時期ではないのかもしれません。
お金の負担が軽くなる時期まで続けることを選ぶのも、立派な判断です。
続けるにしても、変えるにしても、知っておきたいのは、
月にいくらまでなら、収入が減っても暮らしていけるのか
ということです。
月に3万円減っても大丈夫なのか。
5万円なら厳しいのか。
10万円減ると、何をあきらめなければならないのか。
どこまでなら大丈夫かが分かると、選べる働き方も変わってきます。
関連:人生後半、いくら稼げばいいのか|「もっと収入を」から必要な働き方を考える
辞めてからではなく、「収入が減った生活」を先に考える
仕事を辞めてから、慌てて暮らしを立て直そうとすると、気持ちの面でもかなり辛くなります。
だから、辞めると決める前に、収入が減ったあとの暮らしを、先に思い描いてみてほしいのです。
収入ゼロ以外の道と、その現実を確かめる
収入が減るといっても、辞めて収入がゼロになる道だけではありません。
別の会社に移る。今の職場で勤務日数や時間を減らしてもらう。小さな仕事を始める。勤めながら副業をする。
辞めるか続けるかの間にも、いくつかの道があります。
ただ、どの道も、望めばすぐ手に入るものではありません。
年齢で応募できる先が限られることもあります。今の会社に勤務時間を減らせる仕組みがなかったり、言い出しにくかったりもします。副業には、会社の決まりや体力の問題がついてきます。
だからこそ、頭の中で考えるより、自分の場合の現実を確かめてみることが大切です。
会社の決まりごとを読み返してみる。定年後の再雇用では、どんな働き方と給料になるのかを聞いてみる。辞めると決めていなくても、同じくらいの年齢で応募できる求人を眺めてみる。
そうするうちに、ぼんやりしていた「減るかもしれない収入」が、現実の金額として見えてきます。
その額を、毎月の暮らしに当てはめてみる
金額が見えてきたら、毎月の暮らしに当てはめてみます。
足りなくなるのは、どの支払いでしょうか。
このとき、いきなり生活を切り詰めようとしても、たいてい長続きしません。
それよりも、保険やスマホの料金など、毎月決まって出ていくお金にむだがないかを見直す方が、無理なく続けられます。
収入があるうちに見直しておけば、それがそのまま、減ったあとの暮らしの準備にもなります。
見落としやすいのが、辞めたあとも出ていくお金です。
給料が入らなくなっても、次のような支払いはすぐには止まりません。
- 前の年の収入にかかる住民税
- 自分で払うことになる健康保険料
- 60歳前に辞めた場合の国民年金の保険料
次の収入が入るまでを、どう支えるか
もう一つ確かめておきたいのが、次の収入が入るまでの期間です。
手元のお金で何か月暮らせるのかが見えていると、辞めたあとに焦って、合わない仕事に飛びつかずにすみます。
現実に減りそうな額。見直したあとの暮らしにかかるお金。次の収入までを支える手元のお金。
この三つが見えたとき、働き方を変えても暮らしていけるかどうかが、はじめて判断できます。
まだ見えない間は、今の仕事を続けながら確かめていけばいいのです。
それは、ただの我慢ではありません。
収入があるうちにしかできない準備です。
関連:仕事をいつ、どこまで減らしていいのか|必要な収入の変わり目から働く量を考える
お金の不安をなくすのではなく、判断できる大きさにする
お金の不安を、すっかりなくしてから決めようとすると、いつまでたっても決められません。
病気をしたら。次の仕事が見つからなかったら。
心配は、考えれば考えるほど増えるものです。
そこで、心配を二つに分けてみます。
本当に足りない部分と、分からないから怖い部分です。
本当に足りない部分は、確かめれば答えが出ます。
「月に3万円足りない」と分かれば、支出を見直したり、辞める時期を少し先にしたりと、打てる手が見えてきます。
分からないから怖い部分は、どうしても残ります。
でもそれは、辞めても、続けても同じです。今の仕事を続けていれば安心、というわけでもありません。
だから、分からないところまで全部消してから決めようとしなくていいのです。
確かめてみた結果、「今は続けた方がいい」と分かる人もいるでしょう。
反対に、思っていたほど、今の収入は必要ではなかったと気づく人もいます。
どちらの答えになっても、それは確かめたからこそ出せた答えです。
何が怖いのか。いくらなら暮らしていけるのか。
それが分かれば、「怖くて辞められない」と立ち止まるのではなく、
「今は続ける」のか、「働き方を変えてみる」のかを、あなた自身で決められるようになると思います。




