仕事をいつ、どこまで減らしていいのか|必要な収入の変わり目から働く量を考える
体力も気力も、前のようには続かなくなってきた。
もう少し、仕事を減らしたい。
そう思いながらも、
「どこまで減らしていいのか」
が分からず、今の働き方を続けている人は多いのではないでしょうか。
減らしたい。でも、いつ、どこまで減らしていいのか分からない
朝早く出て、夜に帰ってくる。
休みの日は、疲れを取るだけで終わってしまう。
親のことや自分の体のことを考えると、今の働き方を少し減らしたいと思うのは、自然なことです。
ただ、いざ減らそうとすると、二つの怖さが出てきます。
- 減らしすぎて、生活費が足りなくなるのが怖い
- 減らさないまま働き続けて、体や心がもたなくなるのも怖い
どちらに転んでも厳しいので、結局、今のまま働き続けてしまいます。
答えを探そうとして、
「60歳になったら減らす人が多い」
「知り合いは65歳で辞めた」
といった話を聞いても、自分の答えとしてはなかなか結論が出せません。
ローンがいつまで残るかも、家族の事情も、年金が始まるまでの暮らしも、人によって違うからです。
この問題の解決の手がかりになるのは、年齢や周りの人ではありません。
自分の「必要な収入」が変わる時期です。
必要な収入には「変わり目」がある
仕事で稼がなければならないお金は、ずっと同じではありません。
暮らしの中のできごとによって、ある時期を境に減ったり、増えたりします。
たとえば、次のようなときは、仕事で稼ぐ必要があるお金が減ります。
- 住宅ローンを返し終わる
- 子どもが独立して、学費や生活費がかからなくなる
- 年金を受け取り始める
特に住宅ローンが終わるときは、毎月出ていたお金がまるごとなくなるので、大きな変わり目になります。
反対に、必要なお金が増える時期もあります。
- 親の介護にお金がかかるようになる
- 家の修理や、車の買い替えが必要になる
こうした変わり目を、年齢の順に書き出してみてください。
そして、それぞれの時期に、仕事でいくら稼ぐ必要があるのかを並べてみます。
たとえば、今の手取りが月28万円の人なら、こんなふうになります。
(数字は考え方を示すためのものです。実際の金額は人によって違います)
- 57歳まで:住宅ローンと子どもの学費がある。仕事で必要なのは月28万円
- 58歳:子どもが独立する。仕事で必要なのは月23万円
- 60歳:住宅ローンが終わる。仕事で必要なのは月16万円
- 65歳:年金が始まる。仕事で必要なのは月6万円
こうして並べると、今の収入と、その時期に必要なお金との差が、その時期に「減らせる分」だと分かります。
この例なら、58歳では月5万円分、60歳では月12万円分を減らせることになります。
一方で、57歳までのように差がない時期は、まだ減らせる余裕がありません。
まだ足りない時期は、今の働き方を続ける。
それも、変わり目を書き出したからこそ分かる答えです。
関連:人生後半、いくら稼げばいいのか|「もっと収入を」から必要な働き方を考える
減らせる量は、実際に選べる働き方で決まる
減らせる分が分かったら、次はそれを今の働き方に当てはめてみます。
ここで、多くの人がつまずきます。
計算の上では「週3日で足りる」と出ても、その形で働ける職場があるとは限らないからです。
たとえば正社員の場合、正社員のままで勤務日数や時間だけを減らす仕組みがある会社は、多くありません。
実際には、次のような形になることが多いはずです。
- 定年で一度退職し、1年ごとの契約で再雇用される
- 正社員を辞めて、パートやアルバイトとして働く
しかも再雇用では、給料が下がり、役職が外れても、働く日数や時間はほとんど変わらないことがよくあります。
収入は減ったのに、働く日数や時間は減らない。
これでは、思い描いていた「減らす」とは違ってしまいます。
ただ、会社によっては、短い時間で働ける正社員の制度や、週3日・1日数時間といった形の再雇用を用意しているところもあります。
だからこそ、自分の場合はどうなのかを確かめてみることが大切です。
- 今の会社に、勤務日数や時間を減らせる仕組みがあるか
- 再雇用では、日数・時間・給料がどんな形になるのか
- パートなどに変わる場合、同じくらいの年齢で応募できる仕事がどれくらいあるか
確かめてみて、選べる形が限られていることもあるでしょう。
そのときは、働けるうちは、必要な分ぴったりに減らすことにこだわらなくてもかまいません。
少し多めに働く形を選んで、余った分を備えに回すという考え方もあります。
必要なお金より多く入る分は、介護や家の修理など、あとで必要なお金が増える時期のための貯えになります。
関連:収入が減るのが怖くて仕事を辞められない|「辞める・続ける」の前にお金から考える
「いつ」は、変わり目と職場の節目を重ねて決める
どこまで減らせるかが見えてきたら、次は「いつ減らすか」です。
必要なお金が減る前に仕事を減らしてしまうと、お金が足りない時期ができてしまいます。
先ほどの例で、ローンが残っている57歳のうちに仕事を減らせば、毎月の足りない分を貯金で埋めることしか方法がありません。
反対に、必要なお金が減ったあとも同じように働き続けると、必要以上に働くことになります。
ローンが終わったのに、ローンがあった頃と同じだけ働いている。
貯金は増やせるでしょうが、そんな状態が何年も続くことになります。
とはいえ、変わり目が来た日に合わせて、働く日数や時間を自由に変えられるものでもありません。
勤めている人にとって、途中で働き方を変えるのは難しいものです。
そこで、職場の節目に合わせることを考えます。
- 定年
- 再雇用の契約の更新
- 年金の受け取り開始
こうした節目は、働き方を変えやすい時期です。
書き出した変わり目と、職場の節目を見比べて、必要なお金が減ったあとの、いちばん近い節目で減らす。
それが、「いつ」を決める一つの目安になります。
もう一つ、考えておきたいことがあります。
一度に仕事を辞めると、いくつもの変化が同時にやってきます。
- 年金が始まるまで、収入が途切れる期間
- 毎日の生活のリズムの変化
- 職場の人とのつながりの変化
これが一度に来ると、暮らしも気持ちも大きく揺れます。
節目ごとに段階的に減らしていけば、こうした変化を一つずつ受け止めることができます。
減らす予定は、変わり目が動いたら書き直す
書き出した変わり目は、予定どおりに来るとは限りません。
- ローンを早めに返して、完済の時期が早まる
- 親の介護が突然始まり、必要なお金が思ったより増える
- 体調をくずして、予定より早く仕事を減らさざるを得なくなる
変わり目が動けば、減らせる分も、減らす時期も変わります。
だから、予定は一度で決めきらなくていいのです。
何かが変わったら、そのたびに書き出したものを見直して、書き直せばいいのです。
「何歳で辞めるか」を一つ決めようとすると、なかなか答えは出ません。
でも、「次は、いつ、どこまで減らすか」なら、書き出したものを見ながら考えることができます。
いつ、どこまで減らしていいのか。
それは、必要な収入が減る変わり目を書き出し、今の収入との差の分だけ、実際に選べる働き方の中で、変わり目のあとの職場の節目に合わせて減らしていけばいいのだと思います。




