あなたは職人タイプ?商人タイプ?|これからの仕事と働き方を考える
仕事を選ぶとき、
「どんな会社に入るか」
「どんな職種に就くか」
ということを考える人は多いと思います。
でも、もう一つ考えてみてもいいことがあります。
自分は、どんな形で仕事をしていくのが向いているのか。
今回は、それを分かりやすく、
「職人タイプ」と「商人タイプ」
という二つの方向から考えてみたいと思います。
もちろん、人間をきれいに二つに分けられるわけではありません。
両方の性質を持っている人もいますし、経験を重ねる中で変わることもあります。
どちらが優れているという話でもありません。
ただ、自分がどちらに近いのかを考えてみると、これから仕事を選ぶ人にとっても、今後の働き方を考えている人にとっても、一つのヒントになるのではないでしょうか。
職人タイプは「自分でやる人」
ここでいう職人タイプとは、大工さんや料理人など、一般的に「職人」と呼ばれる仕事だけを指しているわけではありません。
会社員でも、専門職でも、個人事業主でも、
自分自身が実務に直接携わり、自分の技術や知識、経験によって仕事の価値を生み出していく人。
そういう人を、この記事では「職人タイプ」と考えます。
たとえば、
- 自分の技術をもっと高めたい
- 人に任せるより、自分でやりたい
- 仕事の細かな部分までこだわりたい
- 自分の手で完成させることに満足を感じる
- 管理することより、実際の仕事そのものが好き
こうした気持ちが強い人は、職人タイプに近いのかもしれません。
専門性を磨き、「この仕事ならこの人」と言われるようになる。
それも立派な仕事人生の一つだと思います。
商人タイプは「人や仕事を動かす人」
一方で、自分ですべての仕事をするのではなく、人や商品、仕事などを動かすことによって価値を生み出す人もいます。
この記事では、そうした人を分かりやすく「商人タイプ」と呼ぶことにします。
たとえば、
- 仕事を取ってきて、適した人に任せる
- 人と人をつなぐ
- 得意な人を組み合わせて仕事を進める
- 全体の流れを考え、仕事がうまく回るようにする
- 人を育て、組織として成果を出す
- 商品やサービスを広げていく
といった働き方です。
人と仕事を仲介して成立させる「ブローカー」のような仕事も、この方向に近いでしょう。
商人タイプは、必ずしも自分自身が一番優れた技術を持っている必要はありません。
その代わり、
誰に何を任せればうまくいくのか、どうすれば全体が動くのかを考える力
が求められます。
自分はどちらなのか、最初から分かるとは限らない
私自身を振り返ってみても、最初から自分の向いている方向が分かっていたわけではありません。
子どもの頃は、身近に職人と呼ばれる人たちが多く、手を動かして物をつくる仕事に、どこか憧れを持っていました。
細かなところまでこだわるところもあり、自分は職人的な仕事に向いているのではないかと思っていた時期もあります。
一方、成長するにつれて、自分自身が先頭に立ってすべてを引っ張るというより、全体を見ながら人を支えたり、物事がうまく進むように考えたりする役割にも興味を持つようになりました。
ただ、人と接することが得意だからといって、誰もが営業や商売に向いているわけでもありません。
私自身も、いわゆる営業上手なタイプとは少し違うと感じていました。
結局、若い頃には、
「自分は職人タイプなのか、商人タイプなのか」
などと明確に考えることもなく、社会人になりました。
今になって振り返ると、若い頃からこういう視点を一つ持っていたら、仕事や将来の方向を考えるうえで参考になったかもしれないと思います。
仕事を経験することで、自分の得意な形が見えてくる
その後、社会人としてさまざまな仕事を経験しました。
自分自身が直接実務を行う仕事もあれば、人に動いてもらいながら全体を進める仕事もありました。
その中で少しずつ分かってきたのは、
私は、まったく何もないところから新しいものを生み出すことより、すでにある仕事を改善し、効率化し、人を含めた全体がうまく回るように整えることの方が得意らしい。
ということでした。
仕事の流れを考える。
やり方を整理する。
誰が何を担当すればうまくいくのかを考える。
メインとなる作業は、その仕事が得意な人に任せる。
自分は、そのための準備をしたり、全体を運営・管理したり、終わった後の片付けまで含めて流れを整える。
そういう役割の方が、自分には合っていると感じるようになりました。
これは、若い頃に頭の中だけで考えていた自分の適性とは、少し違っていました。
自分に向いている仕事は、実際に仕事を経験する中で初めて見えてくることもあるのだと思います。
職人を目指してみたから分かったこともある
とはいえ、私自身、一度は改めて現場の技術を身につけ、職人として働く方向を目指したこともあります。
もともと私には、
「商売の原点は現場にある」
という考えがあります。
現場を知らずに、人を動かしたり仕事を管理したりするだけでは、本当の意味でその仕事を理解することは難しいのではないか。
そう考え、自分自身が現場に立つ道へ進んでみました。
ところが、実際に現場へ入ってみると、長年経験を積んできた人との差は想像以上に大きなものでした。
年齢を重ねてから、一から技術を身につける難しさも感じました。
そして何より、
「自分は思っていたほど、職人的な仕事に向いているわけではないのかもしれない」
ということにも気づきました。
そこで、現場で自分自身が作業することよりも、現場を理解したうえで、仕事全体を調整したり管理したりする方向の方が、自分には合っているのではないかと考えるようになりました。
実際にやってみたからこそ、自分の向き・不向きが見えてきたのです。
会社の中にも「自分でやる人」と「人や組織を動かす人」がいる
この話は、独立する人や経営者だけの話ではありません。
会社員にも同じような違いがあります。
会社組織を考えるときには、「ライン」と「スタッフ」という分け方があります。
一般的には、会社の本来の目的に直接関わりながら仕事を進めていく部門がライン、それを専門的な立場から支援する部門がスタッフと考えられます。
たとえば製造会社であれば、実際に製品をつくったり販売したりする部門がラインになり、人事、経理、企画などは、それを支えるスタッフとしての役割を持ちます。
ただし、
「ライン=職人タイプ」「スタッフ=商人タイプ」と単純に分けられるわけではありません。
ラインの中にも、自分自身が実務を極めていく人もいれば、管理職として多くの人を動かす人もいます。
スタッフの中にも、自分の専門知識を深めていく人もいれば、部署を越えて人や仕事を調整することが得意な人もいます。
それでも、会社の中で自分の適性を考えるとき、
- 自分自身が実務をして成果を出すことに面白さを感じるのか
- 専門知識を身につけ、その道を深く掘り下げたいのか
- 人に仕事を任せ、チームとして成果を出すことに面白さを感じるのか
- 部署や人の間に入り、全体がうまく回るように調整することが得意なのか
と考えてみると、自分がどんな仕事に向いているのかが少し見えやすくなります。
会社では、経験を重ねるにつれて、実務担当者から管理職へ進むこともあります。
しかし、実務で優秀だった人が、人を動かす立場でも同じように力を発揮できるとは限りません。
反対に、自分自身が一番優れた実務担当者でなくても、人の得意なことを見つけ、適材適所で仕事を任せ、全体として成果を出すことに力を発揮する人もいます。
実務を極める力と、人や組織を動かす力は、同じではありません。
だからこそ、「出世するなら管理職」という一つの方向だけではなく、自分はどんな役割で力を発揮できるのかを考えることも大切だと思います。
一人で稼ぐのか、多くの人で稼ぐのか
職人タイプと商人タイプでは、収入のつくり方にも違いがあります。
職人タイプは、自分の技術や知識、経験、時間によって仕事をすることが基本になります。
腕が上がれば、仕事の価値を高めることはできます。
ただ、自分一人が一日に働ける時間には限界があります。
一方、商人タイプは、人に仕事を任せることで、自分一人の時間を超えて仕事を広げられる可能性があります。
分かりやすいのが、単独店とチェーン店の違いです。
自分自身が店に立ち、
「この店だから来たい」
と思ってもらえる一店舗をつくる。
これも素晴らしい商売です。
一方で、自分のやり方を人に伝え、店を任せ、2店舗、10店舗と広げていく方法もあります。
うまくいった場合、後者の方が利益や収入を大きく伸ばせる可能性は高くなるでしょう。
しかし、その代わり、
- 人を採用する
- 人を育てる
- 仕事を任せる
- 資金を管理する
- 品質を保つ
- 問題が起きたときに責任を取る
といった、自分一人で仕事をするのとは違う能力が必要になります。
だから、
「大きく稼げる可能性があるから、商人タイプの方が上」という話ではありません。
どんな仕事をしたいのか。
どのくらいの規模で働きたいのか。
何に仕事の面白さを感じるのか。
それによって選ぶ方向は変わってきます。
人を動かすなら、現場を知ることも大切
私は、どちらかといえば、人に動いてもらいながら全体を考える仕事の方が向いていると感じています。
ただし、
「自分は人を動かす側だから、現場のことは知らなくていい」
とは思いません。
むしろ逆です。
人に仕事を任せるのであれば、ある程度、その仕事の内容を自分も理解しておく必要がある。
何が大変なのか。
どこに時間がかかるのか。
どこが難しいのか。
どこまで出来て、どこから先は専門的な力が必要なのか。
そういうことを知らずに指示だけしても、現場から信頼されるとは限りません。
もちろん会社であれば役職があり、仕事であれば発注する側と受ける側など、それぞれの立場があります。
その立場によって、仕事上は指示できることもあります。
しかし、
「指示できる立場」と「人が気持ちよく動いてくれる人」は同じではありません。
相手の仕事を理解し、自分自身も信頼される。
人を動かす仕事では、そうしたことも大切なのではないかと思います。
収入だけで、自分の働き方を決めなくてもいい
事業を大きくして多くの利益を得たいのであれば、人を使い、組織をつくり、仕事を広げていく力は必要になるでしょう。
資金を用意し、優秀な人を集めることで成立する商売もあります。
それも一つの方法です。
ただ、私は自分がまったく興味を持てない分野に、
「儲かりそうだから」
という理由だけで入っていこうとは、あまり思いません。
自分自身も興味を持てる仕事、好きだと思える分野で、人と関わりながら仕事をしていきたいと思います。
もし自分が店を持つとしても、たくさんの店をチェーン展開するより、一つの店を自分の好きな形につくっていく方を選ぶでしょう。
規模は小さくても自由度が高い。
自分の好みを反映できる。
そんな単独店の良さに魅力を感じるからです。
もちろん、チェーン展開して事業を大きくすることに魅力を感じる人もいるでしょう。
そこにも、職人タイプと商人タイプの違いが表れるのかもしれません。
働く理由や、仕事に何を求めるかは人によって違います。
収入や事業規模だけではなく、自分が納得できる働き方を選ぶことも大切です。
自分で仕事をつくることや、小さな事業を始めることを考えている方は、
「小さな事業の手引き」で、開業準備や集客、お金、事業運営などについて紹介しています。
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若いうちは、まず現場を経験してみる
では、これから仕事を選ぶ若い人は、最初から、
「私は職人タイプです」
「私は商人タイプです」
と決めた方がいいのでしょうか。
私は、そこまで急いで決める必要はないと思っています。
むしろ最初は、
まず現場を知ること。
これが大切だと思います。
どんな仕事でも、実際にやってみなければ分からないことがあります。
- 仕事がどのような流れで進んでいるのか
- お客様が何を求めているのか
- 一緒に働く人が何に苦労しているのか
- 自分は何を得意としているのか
- 反対に、何を苦手としているのか
そうしたことは、頭の中で考えているだけでは、なかなか分かりません。
私は、特別な事情がないのであれば、最初のうちは言われた仕事を忠実にこなせるようになることを目指し、3年程度は修行するくらいの気持ちがあってもいいと思っています。
もちろん、心や身体を壊してまで続けるという意味ではありません。
ただ、本当に自分に合っているかどうかを知るためにも、仕事の基本を身につけるためにも、ある程度の経験は必要です。
仕事の流れを覚え、自分の向き・不向きを知るには、それなりの時間がかかるものです。
その先で「自分はどちらを目指すのか」を考える
現場を経験し、仕事が少し分かるようになってきたら、その先を考えてみる。
そこで今回の、
「自分は職人タイプなのか、商人タイプなのか」
という視点が役に立つと思います。
たとえば、
- もっと技術を磨いて、その道の専門家になりたい
- 自分の仕事の品質をもっと高めたい
- 人を管理するより、自分が実務をしている方が楽しい
- 一つのことを深く追求することに面白さを感じる
と思うなら、職人タイプの道を深めるのも一つです。
反対に、
- 人の得意なことを見つけるのが好き
- 仕事全体の流れを考えるのが好き
- 自分で全部やるより、人に任せることが苦にならない
- 人や仕事を組み合わせて成果を出すことに面白さを感じる
- 自分一人ではできない規模の仕事を動かしてみたい
のであれば、商人タイプの方向を意識してみてもいいでしょう。
そして、一度選んだ方向を一生変えてはいけないわけでもありません。
若いうちは職人として技術を磨き、その経験を生かして、後から人を動かす側へ進む人もいます。
逆に、管理する立場になってみて、
「やっぱり自分は現場の仕事が好きだ」
と気づく人もいるでしょう。
最初から正解を決める必要はありません。
経験しながら、自分に合った方向を見つけていけばいいのだと思います。
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仕事を選ぶとは、「何になるか」だけではない
若い頃の仕事選びというと、
「何の職業に就くか」
を考えることが中心になりやすいと思います。
もちろん、それも大切です。
でも、長く働いてきた今だから思うのは、
「何になるか」と同じくらい、「どんな働き方をする人になりたいのか」を考えることも大切だということです。
自分の腕を磨いて、自分自身の力で価値を生み出していくのか。
人の力を生かしながら、全体を動かして価値を生み出していくのか。
一人で自分らしい仕事をつくっていくのか。
多くの人と一緒に、大きな仕事を動かしていくのか。
どちらが正解ということではありません。
どちらの方が稼げるかだけで決める必要もありません。
まずは現場で仕事を経験する。
その中で、
「自分は何をしているときが一番力を発揮できるのだろう」
と考えてみる。
そして、その先の仕事人生を考えるときに、
「自分は職人タイプなのか。それとも商人タイプなのか。」
そんな視点を一つ持っておくと、これから自分が目指したい働き方が、少し見つけやすくなるのではないでしょうか。

