退職後、毎日何をして過ごせばいいのか|仕事を終えた後の時間との向き合い方
定年を迎えて仕事を辞めたら、毎日が自由になる。
朝早く起きる必要もない。
通勤する必要もない。
会社の予定に合わせて行動する必要もない。
現役時代には、そんな生活を楽しみにしている人もいると思います。
ところが、実際に仕事を辞めてみると、
「今日は何をして過ごそう」
と、毎日の時間を持て余してしまうことがあります。
最初のうちは、ゆっくり休めることがうれしいかもしれません。
しかし、特にやりたいことがないまま何日も過ぎていくと、自由だったはずの時間が、少しずつ「暇な時間」に変わっていきます。
テレビやインターネットを見ながら、何となく一日を過ごす。
気がつけば夕方になり、
「今日も何もしなかったな」
と思いながら一日が終わる。
そんな生活が続くと、退職後の時間をどう過ごせばいいのか分からなくなる人もいるのではないでしょうか。
仕事を辞めた後に失うのは、収入だけではない
退職後の話になると、年金や生活費など、お金のことが中心になりがちです。
もちろん、収入が減ることは大きな問題です。
ただ、仕事を辞めることで変わるのは、お金だけではありません。
仕事には、毎日の生活を形づくる役割もあります。
- 朝起きる時間
- 家を出る時間
- 昼食を取る時間
- 人と話す機会
- 休日と平日の区別
こうした生活のリズムは、自分で意識して作っていたというより、仕事によって自然に作られていたものです。
会社へ行けば、同僚や取引先などと話す機会もあります。
自分が担当する仕事があり、今日やるべきこともあります。
たとえ仕事に強いやりがいを感じていなかったとしても、仕事が毎日の時間を埋め、社会との接点を作ってくれていたのです。
退職すると、その仕組みが一度になくなります。
そのため、仕事から解放されたはずなのに、どこか物足りなさや寂しさを感じることがあります。
退職後に怖いのは「暇」なのかもしれない
退職後に感じる不安には、さまざまなものがあります。
- 孤独になること
- 人とのつながりが減ること
- 生きがいを失うこと
- 身体や頭を使わなくなること
- 家族との距離が近くなりすぎること
これらは、それぞれ別の問題に見えます。
しかし、総合して考えると、その入口にあるのは「暇」なのかもしれません。
やることがない。
出かける場所がない。
一緒に時間を過ごす相手もいない。
すると、家の中にいる時間が増えていきます。
テレビやYouTubeの動画、インスタを見たり、横になったりしながら、何となく一日を過ごすようになります。
外へ出なければ、人と話す機会も減ります。
身体を動かすことも、頭を使うことも少なくなります。
刺激のない生活が続けば、気力まで落ちてしまうことがあります。
最初は、
「今日は何もしたくない」
というだけだったものが、いつの間にか、
「何かを始めること自体が面倒」
という状態になってしまうこともあります。
暇だから悪いというわけではありません。
何もしないで休む時間も必要です。
ただ、何の楽しみも刺激もないまま、一日一日が漠然と過ぎていく生活には注意した方がいいと思います。
関連:退職後に孤独を感じる理由|50代・60代で人とのつながりが変わるとき
仕事中心だった男性ほど時間を持て余しやすい
退職後に何をして過ごせばいいのか分からなくなるのは、特に、これまで仕事中心の生活を送ってきた男性に多いのではないでしょうか。
若い頃から、平日のほとんどを仕事に使ってきた。
休日は身体を休めるだけで終わり、趣味や地域とのつながりを作る余裕もなかった。
会社では人と話していても、仕事を離れて付き合える友人はそれほど多くない。
そういう人が退職すると、一日の大部分を占めていた仕事と、仕事を通じた人間関係を同時に失うことになります。
家族がいるから孤独ではない、とは限りません。
夫婦であっても、それぞれに生活のペースがあります。
退職したからといって、毎日一緒に出かけたり、同じ時間を過ごしたりできるわけではありません。
相手には相手の生活があります。
それまで家にいなかった人が一日中家にいるようになれば、お互いに戸惑うこともあると思います。
だからこそ、退職後は家族だけに時間の使い方を委ねるのではなく、自分一人でも過ごせる方法を持っておくことが大切です。
趣味は無理に作ろうとしても見つからない
退職後の過ごし方について調べると、
- 趣味を持ちましょう
- 地域活動に参加しましょう
- ボランティアを始めましょう
- 旅行を楽しみましょう
- 新しいことを学びましょう
といった提案をよく見かけます。
どれも間違ってはいないと思います。
ただ、
「退職したから趣味を作ろう」
と思って、すぐに夢中になれるものが見つかる人ばかりではありません。
畑仕事。
家の修理。
料理。
釣り。
旅行。
スポーツ。
地域活動。
一人でも楽しめることは、探せばいくらでもあります。
それでも、特にやりたいと思えなかったり、始める気力が出なかったりすることがあります。
そのような人に、
「生きがいを見つけなければならない」
と言っても、かえって負担になるだけかもしれません。
最初から一生続けられる趣味や、大きな生きがいを見つける必要はありません。
少し興味がある。
一度くらいやってみたい。
その程度の気持ちから始めてもいいのだと思います。
関連:60代からの人生をどう生きるか|自分らしい幸せの見つけ方
やる前に考えすぎず、一度試してみる
何かに興味を持っても、始める前からいろいろ考えてしまうことがあります。
- 自分にできるだろうか
- 今さら始めても遅いのではないか
- 道具をそろえて無駄にならないだろうか
- 人間関係が面倒ではないだろうか
- 長く続かなかったら恥ずかしい
しかし、実際にやってみなければ、自分に合っているかどうかは分かりません。
興味を持ったことがあれば、やる前から結論を出すのではなく、一度試してみてもいいと思います。
合わなければ、やめればいい。
楽しいと思えれば、もう一度やってみればいい。
その繰り返しの中で、
「これは自分に合っている」
と思えるものに出会えるかもしれません。
退職後は、結果を出すために何かを始める必要はありません。
上手になる必要も、誰かに評価される必要もありません。
自分が楽しいかどうか。
またやってみたいと思えるかどうか。
それだけで十分ではないでしょうか。
まずは朝、家の外へ出ることから始める
何をすればいいのか分からない人には、まず朝、家の外へ出ることをおすすめしたいと思います。
特別なことをする必要はありません。
少し早く起きて、近所を軽く散歩する。
最初は、それだけでもいいと思います。
朝起きる時間を決めることで、生活のリズムができます。
外へ出れば、季節や天気の変化を感じられます。
近所の人と挨拶を交わすこともあるでしょう。
歩いているうちに、
「今日は少し遠くまで行ってみよう」
「帰ったら庭の手入れをしよう」
「天気がいいから、どこかへ出かけよう」
と、次にやりたいことが思い浮かぶかもしれません。
身体を動かすことで、気持ちが少し前向きになることもあります。
最初から一日の予定を細かく決めるより、まず朝に外へ出て、その日を動かし始める。
そのくらいの始め方が、ちょうどいい人も多いのではないでしょうか。
退職後まで予定で埋める必要はない
退職後の生活を充実させるために、
「毎日の予定を立てましょう」
と言われることがあります。
確かに、何曜日は運動、何曜日は趣味、何曜日は地域活動というように決めた方が動きやすい人もいると思います。
しかし、誰もが計画的な生活を楽しめるわけではありません。
自分で決めた予定であっても、
「今日はこれをやらなければならない」
と思った瞬間に、やらされているように感じる人もいます。
せっかく仕事を辞めて自由な時間を得たのに、今度は自分で予定を詰め込み、その予定に追われるようになっては疲れてしまいます。
スケジュールは、基本的に空いていてもいいと思います。
朝起きて、天気がいいから散歩する。
潮や天気を見て、釣りに出かける。
庭や畑が気になったから、少し手を入れる。
思い立ったから、日帰りで出かける。
今日は疲れているから、家でゆっくりする。
その日、その時に思いついたことをやる。
それも、退職後だからこそできる時間の使い方です。
大切なのは、予定が埋まっているかどうかではありません。
自分の気持ちで一日を選べているかどうかだと思います。
一人で楽しめることを一つ持っておく
人とのつながりは大切です。
友人と出かけたり、地域の活動に参加したり、仲間と趣味を楽しんだりすることは、退職後の生活を豊かにしてくれると思います。
ただ、いつでも誰かが一緒にいてくれるとは限りません。
友人にも家族にも、それぞれの予定や事情があります。
そのため、退職後は人と楽しめることだけでなく、一人でも楽しめることを一つ持っておくと過ごしやすくなります。
例えば、
- 散歩やウォーキング
- 畑や家庭菜園
- 釣り
- 料理
- 読書
- 写真
- 寺社巡り
- 一人旅
- 家の手入れ
どれが正解ということではありません。
お金をかけなければ楽しめないものばかりでもありません。
自分一人でも、
「今日はこれをやってみよう」
と思えるものが一つあるだけで、時間の感じ方は変わると思います。
人とのつながりも、無理のない形で持てばいい
一人で過ごす時間が好きな人でも、誰とも話さない日が何日も続くと、寂しさを感じることがあります。
退職後は、仕事を通じた人とのつながりが急に減るため、社会との接点をどう持つかも大切な問題です。
だからといって、毎日のように集まりへ参加したり、忙しい団体活動を始めたりする必要はありません。
月に一度や、数か月に一度でもいいと思います。
- 地域の行事に顔を出す
- 興味のある講座に参加する
- 趣味の集まりに入ってみる
- ボランティアに参加する
- 無理のない範囲で仕事を続ける
あまり頻繁ではない活動の方が、自分の時間を大切にしながら、無理なく続けられる人もいます。
人とのつながりは、数が多ければいいというものではありません。
時々会って話せる人がいる。
自分のことを知っている人がいる。
自分が少し役に立てる場所がある。
そのくらいのつながりでも、暮らしの安心感は変わると思います。
仕事を続けることも一つの選択肢
退職後の時間を持て余しそうだからといって、完全に仕事を辞めなければならないわけではありません。
体力や生活に無理がなければ、働き続けることも一つの選択肢です。
仕事には、収入だけではなく、
- 生活のリズムを作る
- 人と関わる
- 社会との接点を持つ
- 自分の役割を感じる
といった面もあります。
ただし、現役時代と同じように仕事中心の生活を続ける必要はありません。
週に数日だけ働く。
短い時間だけ働く。
自分の経験を生かせる仕事をする。
収入だけでなく、自分の暮らしに合う働き方を考えてもいいと思います。
仕事を続けるか、完全に辞めるか。
どちらが正しいということではありません。
自分にとって、どのくらい仕事がある生活が心地いいのかを考えることが大切です。
やりたいことは、大げさなものでなくていい
退職後の夢というと、海外旅行や大きな趣味など、特別なことを考えがちです。
もちろん、お金や時間に余裕があれば、長い旅に出るのもいいと思います。
私自身、お金や時間に何の制限もないのであれば、別格霊場を含めた四国108か所を、二か月くらいかけて歩いてみたいと思います。
富士山や上高地へ行ったり、箱根や草津などの温泉地を訪れたりするのも楽しそうです。
ただ、毎日の生活で大切なのは、もっと身近なことなのかもしれません。
朝早く起きて散歩する。
どこかに場所を借りて、朝の一、二時間だけ農作業をする。
週に一度くらい、天気や潮を見ながら釣りに行く。
たまに地域活動へ参加する。
身体は固くても、健康のために一度、合気道を体験してみる。
どれも、必ずやらなければならないことではありません。
すべてを予定どおり行う必要もありません。
ただ、
「やってみたいことがある」
というだけでも、毎日の見え方は少し変わると思います。
関連:50代・60代の働き方に迷ったとき|仕事を続ける・辞める・小さく働く考え方
退職後の自由は、自分で一日を選べること
退職後、毎日何をして過ごせばいいのか。
この問いに、誰にでも当てはまる答えはありません。
趣味に打ち込む人もいるでしょう。
家族との時間を大切にする人もいるでしょう。
旅行を楽しむ人もいれば、畑仕事や家の手入れを楽しむ人もいます。
仕事を無理のない形で続ける人もいると思います。
ただ、何をすればいいのか分からない時に、最初から人生の生きがいを見つけようとする必要はありません。
まずは朝、少し外を歩いてみる。
気になったことを一つ試してみる。
合わなければやめて、別のことをやってみる。
その中で、自分が好きだと思えるものを少しずつ見つけていけばいいのだと思います。
毎日の予定を隙間なく埋める必要もありません。
仕事を終えた後まで、自分をスケジュールで縛らなくてもいいのです。
今日は天気がいいから出かけよう。
今日は家でゆっくりしよう。
明日は何か新しいことをやってみよう。
その日、その時の気持ちで、自分の時間を使える。
それが、仕事を終えた後に手に入る自由なのではないでしょうか。
何もしない日があってもいいと思います。
ただ、何もする気になれない日が何日も続き、家の中だけで一日一日が過ぎていくようなら、小さなことから生活を動かしてみてください。
退職後の人生は、何かをしなければならない時間ではありません。
「今日は何をしてみようかな」
と、自分の気持ちで一日を選べる時間です。
仕事を終えた後の自由とは、予定を埋めることではなく、自分らしく時間を使えることなのだと思います。

