人は一人では生きてはいけない、ことへの感謝

「人間は一人では生きていけない」――これは誰もが知っている“当たり前のこと”です。

しかし、当たり前すぎることほど、私たちは日常の中でつい忘れてしまいがちです。


「衣・食・住」は、人の手によって支えられている

自給自足の生活をしようとしても、衣食住のすべてを完全に一人で賄うことはできません。

身を守る衣服、体を養う食事、暑さ寒さや雨風をしのぐ住まい。どれ一つ欠けても、私たちは生きていくことができません。


歩き遍路で実感した「食事・風呂・睡眠」のありがたさ

四国を歩き遍路した道中で、私が毎日もっとも有難く感じたのは、「食事」「風呂」「寝ること」の3つでした。

歩き疲れた体に、宿の方が心を込めて作ってくれた温かい食事が染みわたる。湯船に浸かるだけで、全身の力がふっと抜けていく。清潔な布団でぐっすり眠れば、明日また歩こうと思える。

この3つは単なる日常の行為ではなく、「生きる力を与えてくれるもの」そのものでした。


山の中で出会った自販機やコンビニの存在

交通の不便な山間部を歩いていると、2、3日ぶりに見つけた自販機やコンビニが、涙が出るほど嬉しい瞬間があります。

過疎化の進んだ街では、唯一のお店がコンビニ1件だけという地域も今や当たり前のように存在しています。

そこに商品を並べ、補充し、遠くから運んでくれている人が必ずいます。過疎化が進む地域で、唯一の店を維持してくれている人もいます。

「便利さ」とは、決して自然にそこにあるものではなく、誰かの労力と時間によって支えられているものなのだと、強く感じました。


日常に戻ると忘れてしまう「人の弱さ」

ところが、日常の生活に戻ると、こうした“有難さ”が一瞬で当たり前に変わってしまいます。

水を得て、食料を確保し、眠る場所があること。これらがどれほど尊いかを、つい忘れてしまうのは人間の弱さかもしれません。


自然と人に生かされているという事実

私たちは自然の恵みの中で生かされ、周りの人々の働きによって支えられています。

生きるとは、誰かの力を借りることの連続であり、つながりの中に存在することそのものです。

だからこそ、今を生きるうえで「感謝の気持ち」を忘れてはいけないのだと思います。

遍路の道で感じたあの有難さを、これからの毎日の中でも大切にしていきたい――そんな思いを込めて、この文章を書きました。